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2005年ちょこっと韓国訪問記:韓国の化粧品業界事情 店主:東 賢太郎(57歳)
その1

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2005 年 11 月 7 日 9:15a.m. 全日空ソウル行きは羽田空港より快晴の空に力強く離陸した。私はこの離陸の瞬間がいつも好きだ。大地を離れて新しい体験と出会いの待つ場所へまさに旅立つワクワクする瞬間だからだ。離陸した機は大きく右に旋回して日本海方面に機首を向けてさらに上昇した。私は左側の窓に顔を張り付け必死に東京や川崎の町を確かめた。その景色のズーッと奥に頭を白くした富士山がはっきり見えた。まさに日本国の大地だ。

 

◆想定外の韓国訪問

この韓国行きが確定したのは3週間程前だった。当店と交流のあるを韓国化粧品のトップメーカー「アモーレパシフィック社」からお誘いを受けたのだ。2年程前から専門店のあり方と云う話題で何度か社の幹部やスタッフの方々が当店に来店されており「一度ご招待したい」とのお誘いだ。この会社は韓国企業の十指に入る優良企業で、売上も 1000 億円を超えている。日本と商環境の違う韓国で、取引先の化粧品店が今後どう進むべきかを提案し啓蒙する為に、日本の専門店との意見交換のおつきあいだ。

初めて訪問する私は韓国の観光的知識が全くない。韓国の正式名称は「大韓民国:デハンミングッ」面積は日本の4分の1、人口は約4700万人、までは調べた。知っている言葉は「アンニョンハセオ:こんにちは」と「カムサハムニダ:ありがとう」のみで、隣国でありながらフリーなひとり旅はまだ考えていなかった。今回は通訳まで待機してくれる全面的サポート付きだった。

◆わずか2時間でソウル着

機は約2時間のフライトの後、ビルや民家の密集したソウル市内を右手に見ながら、金ぽ空港に着陸した。ソウルは東京都と同じく人口1000万人を越えている。入国審査に並んだ乗客を見ると、その8割が外国人でその内8割が日本人のようだった。韓国は既に九州に行く程の距離感なのだ。

到着ゲートを出ると通訳の日本人女性Tさんと、韓国男性社員Kさんが出迎えてくれた。お二人が3日間完全サポートしてくれると云う。いつも一人で気侭な旅をする私にとって、勝手が違う違う旅の始まりだ。お二人とは我が店に来店されて面識があるのでさらに心強かった。

◆ヨン様の存在

車で市内へ向かう途中、私が日本で見た韓国映画「マイブラザー:ウォンビン主演」や今放映中の「私の頭の中の消しゴム」を見た話をした。私が「今日本ではヨン様の(四月の雪)が評判ですよ」と話すと、韓国では余り受けずにすぐに上映中止になった、と教えられた。韓国では自国の映画が大変人気で、次から次へと量産されて、観客が少ないとすぐに切り上げてしまうらしい。テレビの連続ドラマは週に2回の放送で、逆に視聴率が上がれば最終回の予定も内容を膨らませて何回でも延長すると云う。その為、放送の直前(一時間)まで撮影が続くことも珍しくないらしい。このような驚きはその後何度も体感させられた。

この約3年間で一気に盛り上がった韓流ブームの要因は一体何だろう。単に「冬のソナタ」の功績だけだろうか。いや2002年のワールドカップ、韓国の日本文化に対する規制緩和、そして何よりも韓国が国を挙げて、デザインやIT技術などへの質の向上に国家予算を投じたことも大きな要因だろう。そんな下地の中で「冬のソナタ」の登場が一気に火をつけたのだ。


▲郊外の商店街にある一般の化粧品店        ▲AP社に対抗するLG社のコンセプトショップ

◆化粧品専門店視察

この訪問にあたって私は「韓国の化粧品市場を広く視察したい」と希望を云わせてもらった。先方も「是非そうして感想を聞きたい」だった。

はじめに郊外のベットタウンの化粧品専門店を訪問した。そこは「アモーレパシフィック社」(後はAP社と略す)がこれからの専門店はこうあるべき、とAP社が店鋪創りから商品展開、そして販売ノウハウまで企画提案したコンセプトショップで、統一名称「ヒユ・プレイス」と云う名の店だ。ご店主と同業者の立場でいろいろ話をさせてもらった。このような特別取引専門店の展開は2年前から始まり、現在は韓国全土に約750店鋪ある。そしてその数をもっと増やす方針らしい。

広くて洗練された店鋪で、取り扱いブランドもほぼ高級品に絞り込みきれいに並んでいた。2階にはサービス用のエステスペースがゆったりあり、ベットが6台並んでいた。AP社の提案したコンセプトや店鋪設計、そしてショーイングはすばらしく、ソウル内の他の専門店と比べると大きな格差を感じた。ただ、余りにすっきり、きれいに並び過ぎてデパートの化粧品売り場のようでもあった。商圏範囲の広いデパートと違い、気さくに買い物できる近くの専門店とはお客の求めるサービスは違う。私は地域密着の専門店ではもう少しラフな部分も作って、お客の入りやすさと滞在しやすさがあってもいいなと感じた。そこから店とお客とのコミュニケーションが生まれ買い物がもっと楽しくなると思うからだ。具体的に云うと化粧関連グッズや健康関連用品等の充実も必要と思うし、アイキャッチ的な手作りのPOPもあって良いだろう。


▲AP社のコンセプトショップ「ヒユ・プレイス」

実はもう十年以上前だが、資生堂が新しい専門店の提案として化粧品の新業態を3種類開発し、全国に展開した。その業態を取り入れて通常の化粧品店から転換した店も多いが、現在はそれらの多くが撤退している。決して資生堂の戦略が失敗した訳ではないが、各店の独自の運営を規制し、業態のコンセプトを守ろうとするメーカーの力が強すぎたマイナス要因は感じる。そして店側も店鋪のハード的な面に頼る傾向があり、地域密着の商売であると云う認識が薄く、各店独自の魅力作りに欠けていたからだと思う。服飾のファッションショーでもそうだが、モデルが着て歩くそのままで街にでられるものではない。そのモードのエスプリをどうこなして既製服として量産するかが売り上げに重要であるのと同じだろう。AP社の新業態に今後も注目したい。

現在「ヒユ・プレイス」約750店鋪に対して、それに対抗して登場したLG社の専門店ショップも全国に350店程展開しており、それぞれのシェア獲得の競争は激しい。LGショップも見学したが、店鋪設計や規模等はやはりAP社が勝っていた。

◆韓国の化粧品小売り事情

韓国の化粧品小売業界の変遷は日本と全く異なり、訪問販売やマルチ商法的方法で急速に市場が拡大し、その販売促進方法は値引きであった。「いくら値引きしてくれるの?」「おまけはどれだけくれるの?」と云うお客の要望にどこまで答えるかが、昔程ではないにしても以前大きな力となっている。そして近年はインターネットの普及で、ネット販売が急増し現在その売り上げ規模は500億円程と云うから驚く。そしてそちらも大幅な値引きが魅力であり、専門店にとって頭の痛い問題となっている。そのような商環境の中で拡大した化粧品販売市場はまだまだ値引き競争の根が強く、肌診断によるカウンセリングやアドバイス、そしてメイクアップの技術指導などを行うサービス環境は厳しい。

なぜ本来のサービスが受け入れにくいのか考えた。そのようなサービスを欲するお客がまだ少なく「そんな時間はもったいないから安くして」と云われ、お店もしかたがないと、ただ値段やおまけで答えてしまうのではないか。しかし私は、お客がそのようなソフト面のサービス経験が今までない為に、その価値を実感していないからだろうと思った。「AP社」もそれに十分気が付いており、これからの専門店のあり方を地道に啓蒙し、広げていこうとしている。

 

韓国にはもちろん資生堂も早くから進出しているが、市場風土に苦戦している模様だ。そして今コーセー化粧品が、かっての日本での大ヒット商品「雪肌精」を強力に展開し、市場でのコーセーブランドの拡大に大きなエネルギーを注ぎ込みはじめた。インパクトのある販売台と大きなインセンティブで販売店に食い込みを図っている。韓国の化粧品市場はまだまだ予断を許さぬ状況だ。

ソウル市内の最大のデパート「ロッテ」の化粧品売り場も視察させてもらった。こちらは日本のデパートにも勝る、と思わせる程、各メーカーの売り場はデザインや応対に質の高さを感じた。それらはメーカー直営の形態なのでその力の粋を集めているからだろう。中でも「AP社」のコーナーは際立ち、トップメーカーとしての存在を感じた。したがってなおさら街の小売店との大きなギャップを感じた。しかしこれは韓国化粧品小売業界の長い歴史を辿ると一夕一朝には難しいだろうと感じさせられた。
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