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2005年ちょこっと韓国訪問記:韓国の化粧品業界事情 店主:東 賢太郎(57歳)
その2
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◆韓国と日本の掛け橋

女性通訳のTさんは日本人で、普段は日本支社で仕事をしている。スマートで美人の彼女は、韓国留学で6年間滞在していたと云う。留学当時は今のような韓流ブームとは全く無縁で、「何で韓国へ」と友人達にさんざんいわれたそうだ。しかし現在このようなブームの中で、両国の掛け橋として仕事ができていることにとても幸せに感じているそうだ。通訳と云う仕事は映画の翻訳の仕事に近い。長々としゃべった内容を端的に、内容は正確に、そしてその感情のニュアンス等も相手の文化に置き換えて瞬時に伝えなければならない。単に直訳だけでは大きな誤解を招くのだから。私は彼女の語学力と知識のお陰で全くストレスも不自由もなく快適な視察旅行をさせてもらった。

◆AP社の実力と私の杞憂

「AP社」は韓国ではトップクラスの人気企業で若い優秀な社員がたくさん集まる。これはひと頃の日本の大手化粧品メーカーに似ている。幹部クラスの人々も大変紳士的で人柄も良く、企業ポリシーを強く感じさせられた。、それは現在も会社業績が良く、社員の平均年令も低く、経営上の問題は余りないと云う余裕もあるだろう。韓国市場環境の中ではAP社の現在の戦略は正しく成功すると思う。それは消費者の価格志向は「お得」を求めているのであり、その「お得」の本来の価値は決して価格だけの問題でないことを消費者が実感し始めているからだ。韓国の他の流通では消費者志向は明らかにニーズからウオンツに変わって来ている。

しかしあえて云えば、今推進している化粧品販売チャネルを問屋経由から直轄取引きに転換し、コンセプトショップを拡大し、指導し統制していくには今後大きなエネルギーと経費負担が必要だ。また支社や社員の数の増強も必要となる。今の日本の化粧品メーカーが陥ったように、いつの日か膨れ上がった組織のマイナス負担が大きくのしかかるかもしれない。これは今後の韓国の経済成長具合にもよることだが。今後の経営戦略に於いて、それらをどうバランスを取るかが大きな問題だろう。もちろんAP社はそれらもしっかり視野に入れているはずだ。そしてその成功はさらに規模拡大と安定をもたらすだろう。

◆43才と云うAP社の社長

2日目の午後、私は「AP社」の20人程の社員の方々の前で話をさせて頂いたが、熱心な質問が後を立たず汗をかいた。57歳になり、もうそろそろのんびり生きたいな、と感じていた私の心に又新たな情熱を吹き込んでもらった。その方々の数人が近日来日し再び私に会いにくる。私の店も激化する日本の小売り業界にあってその経営戦略に苦慮している。そこで相互の文化や経済環境の違うもの同士が意見交換する有意義な機会なのだ。


▲水原(スウォン)にあるAP社の研修所


「AP社」の研修所も視察させてもらった。ソウルから南へ40 km 程離れた「水原:スウォン」にある。水原は200年程前に漢城(ソウル)を守るために開かれた城郭都市(世界遺産)である。研修所の設備は日本の企業に負けない程のもので、建物も文化や芸術に造詣の深い社長の価値観を強く感じた。教育プログラムは今迄社員教育が主だったが、問屋流通が中心だった過去のシステムから直接取引中心になりつつある今後は、販売店教育にも力を注いでいくと云う。それは重要なことで、メーカーがいくら多くの商品を小売店へ卸すことが出来ても、正しい販売方法で消費者の手に渡り、その良さを実感してリピートされなければ堅実な成長はないのだから。

財界人としても韓国で信頼の厚いAP社の現社長はまだ43才だと云う。創業者の二世とは云え、社員からの尊敬の念は強く、今後世界の化粧品業界でも頭角を表す存在となることは間違いないだろう。最近日本の大手化粧品メーカー社長の若返りも一気に広がっている。韓国はサムソンを筆頭にグローバルな視点で成長しつづける企業が多い。日本と同じく国内だけのマーケットは限られているからだろう。

◆韓国化粧品の日本上陸気配

韓国を旅した人は必ず立ち寄るソウル最大の繁華街「明洞:ミョンドン」を視察した。平日の午後と云うのにとても賑やかだった。お店の数やバラエティーさ、店のお洒落度等、渋谷に勝るものがあった。日本女性のリピーターが多いソウルの魅力は、決して焼肉だけではないと思った。

AP社直営のヤング向けショップと、ヤング向けサービス空間「アモーレ・スター」と云う5階建のファッショナブルなビルも見学した。これは資生堂の「コスメティックガーデン」のようなもので、消費者サービスと企業ロイヤリティー向上が目的だろう。


▲今人気の「ザ・フェイスショップ」

この街には新鮮なデザインでリーズナブル(基礎化粧品: 1000 円前後、メイク類: 500 円前後位)な化粧品を多品種そろえた専門店も多かった。「ミーシャ」「フェイスショップ」「スキンフード」「ザ・カラー」等それぞれが韓国内でチェーン展開している会社で、2年程前から急激に増え今大変人気のようだ。中でも「ザ・フェイスショップ」はエコロジー感覚で渋谷や代官山あたりでも確実にヒットする店と感じた。多分来年あたり日本に上陸するだろう。注目していい。もし進出した場合、そのコンセプトや韓流ブームも手伝って3年程で全国に20〜30店鋪位迄はいくだろう。しかしそれ以上はドラッグストアとの競合や新しいコンセプトショップの登場等で伸び悩み、5年後位には縮小の可能性も想像できる。日本も変化の激しい国なのだ。


▲AP社のヤング向け直営ショップ

日本の化粧品流通チャネルはこの10年間で大きく変化した。バブル崩壊と再販制度の完全撤廃による価格破壊が大きな要因で、急成長したドラッグストアの化粧品売上シェアが拡大した。さらに一般化粧品店の値引き追従も重なり、主に化粧品のマスブランド市場は大きく乱れ、経営悪化で廃業する小売店が増えた。

そこで各メーカーは専門店ブランド強化政策を大きく推進し、企業ブランドのロイヤリティー確保に懸命になった。その中で従来からそのポリシーで展開していたアルビオンやコスメデコルテが堅実に売り上げをのばし、そのブランドに力を注ぐ小売店は成功している。だが、過激な競争で苦しむドラッグストアも価格政策からの脱却に必死で、今後も日本の化粧品小売市場はまだまだ変化が進むだろう。


▲多店化されているコスメショップ「ミーシャ」           ▲AP社のヤングショップ店内

◆アルビオンとコスメデコルテの成長要因

私の店の取扱いメーカーの中心は資生堂、カネボウ、コーセー、アルビオンである。それらのメーカーの中でも取扱条件のハードルが高い専門店専用ブランドが売り上げの大半を占めている。現在月商売平均1100万円の内それらの専門店ブランドの売り上げが約90%を占めている。中でもコーセーのコスメデコルテとアルビオン(以降CDとALと記す)の売り上げが堅調で、今後の見通しも明るい。店としては当然力が入る。私は全国の優良専門店との交流が多いが皆同じ状況のようだ。なぜだろうか。このは会社の経営方針が創業以来一貫して商品の品質とカウンセリングの両輪を絶対的条件に置き実施してきたからだ。もちろん資生堂やカネボウもその姿勢は同じである。しかし両社はバブル期も安易に販売店を拡大することなく、現在も販売店の数を増やすことなく、しっかりしたカウンセリングや技術の指導や啓蒙を通して、1店鋪あたりの売り上げアップに重点をおいている。ドラッグストアとの取り引きもない。それらが末端の消費者の信頼とブランドロイヤリティを高め地力をさらに高めている。

価格破壊の化粧品市場で専門店が生き残り、さらなる成長を真に考える店にとって値引きの必要がなく、しっかりしたサービスにコストをかけられるCDとALの取り扱いは堅実な戦略だ。

 
▲にぎわう明洞(ミョンドン)の街           ▲AP社の「アモーレ・スター」

このCDとALの成長要因はもうひとつある。それはメデアからの支持だろう。品質や消費者の信頼感に答えるかのようにパブリシティー(記事告知)の掲載が他社の規模に比べて大変高く効率が良い。小売店の立場で考えるとその効果は大変高く、店頭販売の大きな後押しとなっている。スケールの大きな資生堂やカネボウと比べるとその売り上げではまだまだその差は大きいが、勝ちっぷりでは誰も異論はないだろう。
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