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2006年8月フランス3,500kmドライブの旅 店主:東 賢太郎(58歳)
その3

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<古代劇場の町オランジュでオペラ>
 その日はプロバンスのオランジュあたりまで進む予定だった。岐阜県の奥飛騨からさらに京都を目指す程の感じかもしれない。ル・ピュイを出て、パリとマルセイユを結ぶ街道の中間地点にある「ヴァランス」へ抜ける道は、長野や岐阜県の林道を走るような狭いS字カーブの連続だった。そこから高速道路でプロバンスの入り口「オランジュ」に着いたのは夕方5時、なんだか凄い賑わいだ。途中の高速道路で大きな事故を目撃した為、人や車の多い狭い町中を走るのに異常に神経を使った。



 オランジュには紀元前一世紀に建てられた幅103m、高さ36m、収容人数1万人の野外劇場がある。古代遺跡の中では特に保存状態が良く、中央舞台の壁には当時の皇帝アウグストゥスの彫像が上から客席を見下ろすように立っている。
 ホテルで一時間程睡眠をとって町に出ると、その円形劇場の周りのレストランは超満席でごった返していた。これからベルディのオペラがあると云う。チケットはもうないだろうと思ったがまだあった。「あなたのはこの席がお薦めです」と前列の2万5千円程のチケットを見せた。それが礼儀なのだろう。「私は劇場全体を見渡せる後ろの4階席がいいな」。それでも6000円だった。
 やっと暗くなり始めた夜9時半に指揮者が拍手に迎えられ、100人の大オーケストラが演奏を始めた。客席はほぼ満席で、上から眺める1万人の聴衆とオーケストラ、そして色とりどりの照明に浮かび上がった歌い手達のすばらしい生の歌声に、私は感動で身震いした。見上げた空はまだ深い青色をしていた。



<スイス人女性との出会い>
 私は昨年何度か東京にある新国立劇場の本格オペラを見た。しかしここでは原語で字幕が無く、背もたれのない古代の席で、疲れもあったからか私は徐々に睡魔に襲われ辛かった。
 幕間の長い休憩で半券を持ち外に出た。たまたま一緒に外へ出た女性と目の前のカフェに入った。スイスから一人旅の30代の女性だ。テレビ業界の人で新しい企画の調査を兼ねての旅らしい。世界のテレビ局は相互に番組企画のリンクがあるらしく、視聴率の取れる人気番組はどこも真似しあうそうだ。そういえばフランスでも「欽ちゃんの仮装大賞」と全く瓜二つの番組が放映されていた。「どっちが真似したんだろう」。
 オペラの休憩が終わり、始まる時間が来たが再入場せず話を続けた。「日本の撮影部隊と一緒に仕事をしたことがあるけど、その技術と真面目さに驚いたわ」と、彼女が詳しく話して聞かせたが、言葉の壁で理解しにくかった。私は一週間位前にNHKが、この古代劇場を生中継で紹介したことを話すと「私も日本で生中継したいわ。徳島の阿波踊りが面白いでしょう」と云った。白ワインが美味しく二人とも相当飲んだ。「この人飲んべだ」。私の年令を聞かれ素直に答えるとケラケラ笑った。「なぜ笑った!」酔ったのか彼女の口調が早くなり、ドイツ語なまりもあるのかさっぱり理解できなくなった。彼女のカメラで二人記念撮影。メールで送ってくれると云ったが未だ届いていない。しばらくして二人で町を歩き、又カフェでコーヒーを飲み別れた。
 この時期、女性一人旅は以外と多いのに驚いた。大きなリュックに寝袋まで担いだ女性一人のバックパッカーにも出会った。夏のヨーロッパは夜9時まで明るく暖かいので旅しやすいのだろう。



<神のお告げで造ったアビニョンの橋>
 よく日訪れたアビニョンはプロバンスらしい快晴だった。ベネディクト12世が創建した法皇宮殿を守るように位置する「ロシェ・デ・ドン公園」からローヌ川を見下ろすと、半壊したままの「サン・ベネゼ橋」(いわゆるアビニョンの橋)がすぐそこに見えた。その橋はベネゼと云う若い羊飼いが「神のお告げを聞いた」と云って、町の人々と12世紀末に完成させた。しかし17世紀に雨の増水の為、橋は川の中程から向こう端まで流され、現在もそのままで保存されている。



 しかし、ジャンヌ・ダルクといい、このベネゼといい、昔のヨーロッパには神のお告げが多い。お告げ、と云っても初めは誰も信用しないのだが、神の力が宿ったようなパフォーマンスで民衆を納得させた、と云う伝説が残っているのだ。

 アビニョンでは毎年7月に大きな演劇祭が行われる。世界中から200以上もの劇団やグループが参加し、劇場や、カフェや道端でパフォーマンスする。その時期、町中の壁や街灯は個々の宣伝ポスターで埋め尽くされる。私が訪問したのはその祭りが終わった直後で、町のあちこちの道路には剥がされたポスターがゴミとなり山と積まれてあった。正に「兵者どもが夢の跡」だ。アビニョンの旧市街は古い城壁で囲まれ、ローヌ川と緑の木々で大変美しい町だった。


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